「速さ」などが生活のなかで身についている子は、応用力が育っている
算数、数学、理科、社会、国語などのすべての教科を普段の生活の中で身に着けることは、非常に重要です。生活の中でそれらのことを身に着けている子には応用力があります。そうでない子は、難しい問題を自力で考えて解いていくには厳しくなっていきます。また、大学入試の共通テストでも全ての教科において生活の中で使える問題がかなり意識されています。数学では三角関数を使った測量の問題などもよく出題されています。
「速さ」は100%生活と結びつきますが、「速度」「距離」「時間」の関係公式を覚えさせて、その公式に数字を当てはめるやり方で教えている学校や塾の先生が結構いるのには驚かされます。そのやり方だと時速40㎞を分速何mに直す簡単な応用でもできない場合が多いです。公式を覚える必要はほとんどありません。「速さ」の意味がわかれば、式は自然に導けます。理数系科目が真にできる生徒や理科系の人達は、そのように意味から導くのが普通です。
生活の中の算数を「速さ」を例にして説明していきます。
小学5年生の子供のかねてからの要望で、家族で名古屋からユニバーサルスタジオジャパン(USJ)に行くことになりました。朝早く7時に家を出ました。USJまでの道のりは200㎞で高速道路を使っていくので平均の時速は80㎞くらいになります。途中で一回サービスエリアで30分休憩する予定です。お父さんは「USJまで200㎞あって時速80㎞で行くと何時くらいにUSJに着けるかな。」と子供に聞くことができます。この場合、子供は速さを習っていないので時速80㎞の意味がわかっていません。親は子供に「時速80㎞は1時間に80㎞進むんだよ。」と教えてあげてください。そうすれば、1時間で80㎞、2時間で160㎞、あと40㎞は80㎞の半分だから、もう30分かかることがわかり合計で2時間30分かかることになり、30分の休憩を合わせて3時間必要になります。
そのように考えれば、速さを習っていない小5の子でもUSJに「10時くらいに着くよ。」と答えることができると思います。その時、親は「すごいね。よくできたね。」とほめてあげてください。親としては本当にうれしいことだと思います。
生活の中に算数がある子は、新しい単元でも、上の速さの例のように考え方のヒント(上の場合は、時速80㎞は1時間に80㎞進む)を少し与えるだけで、自分で簡単に問題をサクサク解いていくことができます。難しい応用問題にも柔軟に対応できます。算数、数学、理科などを楽しく勉強することができます。その逆に、生活の中に勉強する事柄があまり入っていない子は、勉強で身に着けることにも苦労します。また、粘り強く教えて、その単元をできるようにしても月日がたつと、とくに応用問題では再びできなくなってしまうことも多いです。
私の経験からみても、生活の中に算数があるかないかで、その項目を習う前から本当に差があるのです。それと重要なことは、理数系教科を公式当てはめ型の暗記式で教わってしまうと、理系的な思考力が育たなくなってしまいます。最初は暗記式でも学校のテストは点数が取れますが、だんだん難しくなり応用力が必要になってくると、理数系教科は苦手になってしまいます。暗記式で習うか、事柄の意味で習うかは、小学校だと完全に先生の運になってしまいます。最近の傾向では、前者の暗記式がますます多くなってきています。親御さんとしては、家庭では上のUSJへ行くときの会話のようなことを普段から行っていくと良いですし、塾を選ぶ時も、暗記重視の詰め込み式ではなく事柄の意味で考えさせて身につかせていく塾を選ぶことをお勧めします。