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二極化する中学校の学力

 最近、一般社会を語るときによく使われる言葉に、「二極化」や「格差社会」が進んでいる、「勝ち組と負け組」がはっきりしているがあります。公立中学の成績も、学力の差が広がり二極化がかなり進んでいるように思います。

 私が、中学生だったころは、間違いなくグラフの三番目のように平均点あたりの生徒が多く、平均が山の頂点になり、高得点や低得点になるにつれて人数が減っていくものでした。ちなみに、そのグラフは統計学として高校の数学で学習しますが、正規分布曲線と言います。たとえば、日本人の成人男性の身長の分布などの自然界のデータは、ほぼすべて正規分布曲線を描きます。

 中学校の成績が、一番目や二番目のグラフになっていることを、初めて認識したのは、15年くらい前になります。ある学年の定期テストの五教科の合計得点と五教科それぞれの得点の分布図を生徒から見せてもらった時です。そのグラフを見て驚きました。その中には、一番目や二番目のグラフのようになっているものがありました。一番目のグラフは、低得点層と高得点層にふたつのピークがある完全に二極化しているものです。二番目のグラフは平均点より低いところにピークがあるものです。つい最近見せてもらったものは、新中3の実力テストの全生徒の5教科合計点の分布図で、見せてもらった2校とも一番目のグラフのようになっていました。

 テストでは、四択、五択問題を多くすれば、その問題の答えが全くわからなくても4分の1、5分の1の確率で当たるので、三番目の正規分布のグラフに近くなります。実際の教育現場では、テスト以上に学力の二極化が進んでいることも推測できます。

 私なりに「なぜ、そうなってしまったのか?」を考えて、下記に四つ挙げてみました。推測するしかないところが、教育の難しさであり、おもしろいところかもしれません。 

 ①理数科目の基となる小学校で習う算数が、20年くらい前と比べても簡単になりすぎています。小学校の算数のテストも簡単すぎます。周りの小学校のテストは学校の先生がつくるのではなく既成品のもので、平均点はたぶん80点くらいで、ミスしなかったら、事柄の意味がほとんどわかっていなくても公式に当てはめるだけで100点も取れてしまいます。いつも、90点くらい取っている子でも、あまりわかっていなく解いている場合は、中学では下位層になってしまうことは、普通にありえます。小学校のときにテストの点が良くても中学では、下位層になる予備軍の子たちがいっぱいいるようです。その逆に、わりとわかっていて70点くらいの子なら、中学では努力すれば、上位層に食い込むこができます。

 主要5教科の中学で学習することが、戦後から昭和、平成の前半くらいの時代と比べると難しくなっています。学校のテストも難しくなっています。また、今の中学生たちは、以前と比べると良く勉強しています。塾がたくさんでき、高校受験をもとにあおりすぎていることもあります。結果として、学力の差が開くことになります。私は、勉強は高校に入ってからが重要と常々言っています。中学での勉強時間がピークになる生徒もいるようです。

 ③小学校で国語の時間数が減ったことや、本を読まない子が増えています。結果的に、勉強の基本となる読解力、聞き取る力が低い子が増えています。

 ④小学校で英語が必修化されたことにより、中学で英語がスタートしたらすぐに授業についていけなくなったり、きらいになる生徒が増えています。小学校で習ったことになっていて、中学では小学校で書けることになっている単語は640ほどもあります。「小学校の英語の必修化とその効果と問題点」は次回のブログで詳しく書く予定にしています。

 

 以上の4点は、私の経験を基にしたものです。それと、上位層だから良いとか、下位層だから良くないと言っているわけではありません。下位層もがんばれば上位層に食い込めるだろうし、成績が良いか良くないかは重要ですが、そのことがすべてでもないからです。ただ、いろんなことを考えて、生徒達が勉強や行動をすることは重要です。また、中学の時点で、学力の二極化がかなり進行していることを、国が把握して、まず、もっと懸念すべきだと思っています。